成年後見と障害福祉をめぐるリアルな話
こんにちは。
11月16日に開催された福祉講座の内容を、簡単にご報告させていただきます。
日曜日の開催にも関わらず、今回も多くの方にご参加いただきました。親同士のつながりでお誘いくださった方や、士業の知人を紹介してくださった方など、参加の輪がじわじわと広がってきているのを感じ、とても嬉しく思っています。
第1部
[講師]
川瀬麻絵 先生
(田嶋・水谷法律事務所 弁護士)
障害者差別解消法対応講座
障がいのある人もない人も共に生きるための対話と理解のヒントを考えます。
障害者差別解消法対応講座では建設的対話と、日常の場面でできる工夫について、お話をしていただきました。
福祉事業所だけではなく、ピアノ教室、美容室、飲食店、学校など、日常生活のあらゆる場面で関わる大切な内容でした。
講座で何度も強調されていたのは、障害のある方と事業者の “建設的な対話” が何より大切だということ。
障害者側にも、状況を伝える努力や工夫が必要であり、事業者側にも「どうすればできるか」を一緒に探す姿勢が求められます。
その双方があって初めて、安心して利用できる環境が作られていきます。
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障害者差別解消法のエッセンスは「2本の柱」
講座では、とてもわかりやすく以下の2点に整理されていました。
① 不当な差別的取り扱いの禁止正当な理由なく、障害を理由に
- サービス提供を拒否する
- 利用の場所や時間を制限する
- 障害のない人には課さない条件を付ける
こうした対応は「不当な差別的取り扱い」に該当します。
② 合理的配慮の提供の義務化(令和6年4月~事業者も義務)
これまでは努力義務だった合理的配慮が、令和6年4月以降は「義務」となりました。“できる範囲での調整” を行うことが求められます。
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正当な理由とは? 判断のポイント
正当な理由があるかどうかは、客観的に見て目的が正当で、やむを得ない場合であるか、障害者・事業者・第三者の権利利益を総合的に考慮して判断する。
という基準で考えられます。
具体的には、
- 安全の確保
- 財産の保全
- 事業の目的・内容・機能の維持
- 損害の防止
- 行政機関の事務・事業の目的の維持
などを総合的に見て判断します。
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日常の場面での具体例
(いただいた内容をそのまま掲載)
● ピアノ教室
- 元から知り合いで本人の人間性を知っている先生で受け入れてもらえた。
● 美容室
- マンツーマンサロンを利用。
- 家族が付き添い、家族間での信頼関係があったので、多少のハプニングも乗り越えられた。
● 飲食店
- 予めトイレの位置などを下見。
- メニュー等の読み上げを予め伝えるなどの工夫をお互いにする事で、利用ができるかも?
● 学校・習いごと・塾
- 親の付き添いや、学習内容にどこまで干渉できるのか?
- どのような判断がなされたか?について、お話しくださいました。
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困った時は、相談できる窓口があります
利用する側も、事業者側も、「どうしていいのか分からない」「対応に迷ってしまう」そんな時には、一人で抱え込む必要はありません。
- 名古屋市障害者差別相談センター
- 各市町村・都道府県の障害福祉課
- 雇用分野であればハローワーク
これらの窓口に相談することがおすすめです。
法の解釈や事例、必要に応じた助言を受けられるため、とても心強い存在です。
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まとめ
障害者差別解消法は、特別な場面だけに関係するものではなく、ピアノ教室、美容室、飲食店、学校など、私たちの生活の至るところに関わっています。
法律の本質は、「拒否するのではなく、どうすればできるかを一緒に考えること」だと改めて感じました。
そのために必要なのは、建設的な対話と、双方の小さな工夫。
困ったときは、ためらわず相談窓口を頼りながら、日常の中でできる合理的配慮を一歩ずつ広げていけたらと思います。

第2部
[講師]
武藤久美子 先生
(行政書士にじのわオフィス 行政書士・社会福祉士)
わが子の未来と私のしごと ― 親であり士業である立場から
障害のある子を育てる親であり行政書士でもある講師が、日常の困りごとや工夫、制度の“ギャップ”をリアルに語ります。
行政書士・社会福祉士であり、障害のある子の“当事者の親”でもある[武藤久美子先生] のお話を伺いました。
「親なき後」という言葉への違和感
武藤先生は冒頭で、こう話されました。
「親なき後」という言葉そのものが、不安をあおるビジネススタイルになっている
支援の現場からすると、「制度をどう使うか」という話が中心になりがちですが、本当に必要なのは“制度の説明”ではなく 生活そのものの安定。
法律で支援できる範囲はほんの一部です。
多くの親御さんや当事者が困っているのは、もっと日常のリアルな部分。
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親も本人も抱えているのは
制度ではなく 「居場所の不安」
印象的だったのは、武藤先生のこの言葉。
「親なき後の不安の根っこは、実は“今の生活の居場所の不安”です」
障害のある本人も家族も、すでに日々の生活の中で困っている。
特に強く感じられていたのは 「居場所がない不安」。
居場所が安心して存在していれば、「親なき後」への不安も過剰に膨らむことはありません。
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実際に今、起きている生活の困難
● 放課後の居場所問題
平日は
夕方 5 時すぎまで放課後デイ → 6 時前に帰宅
しかし夏休みは
10 時~15 時で終了 → 帰宅時間が早まり、居場所が不足
頼れる祖父母がいればよいですが、
祖父母の介護が始まると、親が正社員で働く道が閉ざされてしまう。
働き続けるためには、
放課後デイだけでなく 移動支援・居宅介護 を組み合わせる必要があります。
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● 制度が理由で「利用を断られる」現実
児童発達支援・放課後等デイサービスには人員基準・定員基準 があり、その制度の枠組みのせいで、利用を断られることがあります。
特に
- 強度行動障害児
- 自閉症児
この児童への受け入れハードルは非常に高いのが現実。
自閉症児の家庭は疲弊しやすく、カサンドラ症候群 に陥る親御さんも少なくありません。
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● 組み合わせで負担を減らす
利用できるサービスは単体ではなく、組み合わせて使う ことが大切。
- 居宅介護
- 移動支援
- ショートステイ
- 日中一時支援
相談支援専門員に相談するのが基本ですが、合わないと思ったら 相談員を変える勇気 も必要です。
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未来の安心は「今の生活を整える」ことから未来の安心は、今の不安を減らすことから始まる。
今の生活が整えば、それがそのまま“親なき後対策”になる。
制度よりも、今日の暮らしをどう整えるかが大事。
この視点はとても本質的だと感じました。
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お金の不安は「生命保険信託」で解消
また、将来のお金の不安については生命保険信託 を活用することで解消できた、とのお話も。
お金の部分は仕組みで担保し、生活面は“今”の安心を積み重ねる。
二本立てで未来を明るくする考え方です。
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今日からできる3本柱
武藤先生が最後にまとめてくださったのは、この3つ。
- 生活の引き継ぎ書を作る
食事・睡眠・好き嫌い・困りごと・成功体験…どんな小さなことでも、生活のコツを“見える化”する。 - 家族以外の理解者を1人つくる
親以外に、1人でも「この子を知っている人」がいるだけで、将来の不安は大きく減る。 - 制度は道具として使う。無理に合わせない
制度に家族が合わせるのではなく、「必要な部分だけ使う」「合わなければ変える」。その柔軟さが大切。
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最後に
「親なき後」の不安に向き合う前に、まず 今日の生活を整える こと。
“居場所の安心” を手に入れること。
これこそが、将来につながる一番の備えになる。
武藤先生のお話は、制度だけでは語れない、とてもリアルで温かい視点でした。

最後に
「福祉」と聞くと難しく感じてしまうかもしれませんが、今回の講座では、暮らしに直結する話がたくさんありました。
障害のある方が地域の中で、自分らしく安心して暮らしていくためには、家族・支援者・地域の人たちが少しずつ行動していくことが大切です。
そんな前向きなメッセージが、参加者の皆さんの心にしっかり届いた講座だったと思います。

お茶タイムと親御さん同士の交流会
講演会終了後に、“お茶を飲みながら親御さん同士で交流いただく時間“を設けました。
持ち寄ったお菓子を囲み、支援者・ご家族の垣根を超えて井戸端会議の様に気軽におしゃべりができる時間となりました。制度の話にとどまらず、「うちではこうしている」「学校との連携はどうしている?」と言った実際の生活に基づいた会話が自然と生まれ、主催者としてもとても嬉しい光景でした。
今回参加できなかった皆さまも、次回はぜひ交流の場に残っていただき、親御さん同士での情報交換やちょっとした疑問の解消にお役立てください。

”プチマルシェ”のご案内
セミナー終了後に、会場内で“プチマルシェ”を開催します。
野菜や果物・お菓子・小物類など、お好きなものを講演会の参加費だけで出展していただけます。ブース出展をご希望の方は、ぜひ運営までご連絡ください。
福祉講座
次回のお知らせ
[日時]
2026年1月18日(日)13時30分 〜
[会場]
岩倉市生涯学習センター研修室1
ご興味のある方は、どなたでもお気軽にご参加ください。
皆さまとまたお会いできるのを楽しみにしております!



